2005/4/15 不動産活用と借入金
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不動産活用と借入金
大城 嗣博氏 アセットコンサルティングネットワーク(有)代表取締役


 賃貸物件建築など、不動産活用を図る際に資金調達における選択肢の一つとして借入金の活用が考えられます。この借入金を積極的に活用している理由は何でしょうか。
 大きな理由は2つあると言えます。1つはキャッシュポジションを低下させないよう自己資金を使わずに、他人資本を活用する事が挙げられます。もう1つは、借入金は相続税上も有利だし、損金参入できるので資金繰り的にも有利だという錯覚に起因しているのでしょう。今回のトピックスは後者の解説をしていきましょう。

 <借入金が相続税上で有利にならない理由>
 自己資金で活用を図る事例と借入金で活用を図る事例を見比べてみましょう。どちらも評価引下げ額は結果的に同じです。つまり相続税額に対して「借金の有無は無関係」なのです。何故なら借金は資金調達の問題であり資産と負債の差額である純資産額は変動しないからです。相続評価が下がる理由は、「額面評価の現金や借入金」と「割引評価をされる賃貸建物と土地」の差異にあるからで、借金の有無は無関係です。

 <借入金が資金繰り上で有利にならない理由>
 自己資金で活用を図る事例と借入金で活用を図る事例を見比べてみましょう。どちらも「収入」と「金利以外の経費・控除」は同額です。両者は金利負担分だけ「所得額」に影響が出ています。「借入金が有る場合」は建物分の金利が経費になりますから、所得を引下げる効果が出ています。所得が引下がった結果、負担する税金も下がっています。
 でも、両者の手取り額を比べてみて下さい。「借金をしていない場合」の方が、約200万円も手取り額が多いのです。なぜでしょうか?
 それは、金利も税金も「お金が出て行く」ことには変わりがないからです。支払先が金融機関なのか、国なのかという点では異なりますが、資金流出という点では他の支出項目となんら変わらないのです。金利として支出した額に対して所得税が安くなる率は、所有者の所得税等実効税率分(図は35%)だけです。この所得税が安くなる経費部分を専門用語ではタックスシールドと言いますが、ここではシンプルに『税金額だけではなく資金収支全体で考える』ということを念頭に置きましょう。皆様のお客様にもこれらの点を誤解なさっている方がいらっしゃるのではないでしょうか。




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