2005/8/15 <元本保証 1% 円定期>のからくり
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<元本保証 1% 円定期>のからくり
梅本 洋一氏 (株)アセットマネジメント・ラボラトリー


こんにちはアセットマネジメント・ラボラトリーの梅本です。
アセットマネジメント・ラボラトリーはリスクマネジメント・ラボラトリーグループで証券仲介業を担当しております。
保険だけでなく、弊社が資産運用のコンサルティングも担当することでお客様の満足度を一層高めるのが目標です。
今回は、話題の「元本保証 1% 円定期」の仕組みをご紹介します。
この話で、皆様のお客様にも小さな『サプライズ』を提供できたら嬉しく思います。

 話題の1%定期預金
CM、雑誌、新聞広告で宣伝されている「元本保証 1% 円定期」をご存知の方も多いと思います。
皆様もお客様との会話で「あの1%の定期預金はどうなの?」と話題になったこともあるかもしれません。

なぜ、通常の定期預金が0.02%なのに1%の金利が付くのか不思議ではありませんか?その仕組みは通常の預金と違う『からくり』があるのです。

平たくいえば、『賭けをすることで利息を先取りしている』ということなのです。

 高利回りは『賭け』のご褒美
わかりやすい例でみてみましょう。
8月10日現在、長期国債の利回りは1.4%台です。
つまり、約10年という時間、資金を寝かせられ、かつ、その間金利が上昇しなければ最高の安全性と収益性を兼ね備えた金融商品ということになります。

ところが、その間金利が上昇した場合は、途中換金すると元本割れし、かつ、満期まで低い金利で固定してしまうという最悪の金融商品に変わります。

つまり、この先、金利は上昇しないという『賭け』を意識的・無意識的にすることで、通常の預金金利0.02%を、1.4%の長期の固定金利に引き換えているのです。

この基本的な構造は「元本保証 1% 円定期」でも同様です。つまり、今後、満期まで金利は一定以上に上昇しないという『賭け』と引き換えに高利回りが銀行によって約束されているのです。(「元本保証 1% 円定期」が原則的に満期まで解約が認められないのも、途中、金利が上昇した場合に元本を大きく割り込んでいる恐れがあるためです。)

 上がるか、上がらないか。貸すか、借りるか。
ただ、その賭けの手段としてデリバティブを使用しているのが「元本保証 1% 円定期」の大きな特徴です。
デリバティブとはこの場合、金利オプション、金利スワップと呼ばれるもので、『金利が上昇する方に賭ける人』と『金利が上昇しない方にかける人』が必ず存在します。

「元本保証 1% 円定期」の場合、『上昇しない方に賭ける人が預金者』で『金利が上昇する方に賭ける人が銀行』になります。であれば、金利が上昇しない場合、銀行は損をするかというと、「元本保証 1% 円定期」の預け入れ期間とほぼ同じである前述の長期国債の利回りが1.4%なので、単純に言ってしまえば、予め長期国債を購入することでリスクヘッジできるのです。

預金をする人はなるべく高い金利を長く貰いたい一方、借りる銀行はなるべく低い金利で長く借りたいという基本的な利害関係があります。
「元本保証 1% 円定期」の説明書には「満期は原則●年、ただし当銀行の判断で満期時期を×年延長する場合があります。その場合も1%の金利は継続します。」と但し書きがあります。
これは「金利が上がっても安い金利でお金を借り続ける権利を銀行は持っています。」ということなのです。

 デリバティブ金融商品は身近になったが・・・
また、「元本保証 1% 円定期」ように金利デリバティブだけでなく、為替、株式のデリバティブを組み込んだ商品は他にも多く、大変身近になってきています。

例えば、個人向けに銀行窓口で販売している『元本確保型投信』『リスク限定・軽減型投信』、証券会社が公益法人、学校法人、医療法人、宗教法人に提案している『仕組み債』と呼ばれる商品も基本的には「元本保証 1% 円定期」と同様の構造です。

メリットばかりだけでなく、後で金利が上昇したときなどに、元本割れや不利な低金利での固定という予想外の不利益を被らないためにも、仕組みを理解したうえで正しく活用することが大切なのは言うまでもありません。(*満期時は元本が約束されている『仕組み債』も、途中の時価が20%以上も値下がりしているということも珍しくありません)

残念ながら、「元本保証 1% 円定期」などのデリバティブ金融商品の仕組みについて『賭けの要素』、『お客様と銀行・金融機関はそれぞれどっちに賭けているか』『貸す方(預金する方)と借りるほう(預金を預かる方)の利害関係』という事実から、お客様に正しく理解・説明されていることは皆無に近いのが現実のようです。


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