2006/5/2 フォード財団の資金運用マニュアルに学ぶ(1)
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フォード財団の資金運用マニュアルに学ぶ“自分に適した資産運用”(1)
梅本 洋一氏 (株)アセットマネジメント・ラボラトリー


 こんにちはアセットマネジメント・ラボラトリーの梅本です。前回は“株式投資は一か八かのバクチか”をテーマに、
(1)そもそも預金・債券・株式などの資金運用・金融取引は「投資家の資金を事業家に託し殖やしてもらう行為」と「投資家から資金を託された事業家がいずれ元金と“利益”を返済する行為」という『貸し借りの原理』で成り立っていること。
(2)個別の資産運用や事業成果をみれば「金融機関・事業が破綻した」「損して解約した」「下がって“塩漬け”になっている」という失敗話は常に起こっていること。
(3)しかしながら、個々の証券・商品や事業成果という「木」でなく、株式市場や経済全体という「森」で見た場合に『貸し借りの原理』が機能していなければ、株式会社や株式市場、経済は存在しないはずであること。
という事柄を検証しました。結果、世界中の株式市場は「どんなに大きく値下がりしても」また「どんなに長く低迷しても」、早晩、投資家に利益を報い続けてきたということが実証研究でわかっています。このような「木を見ずに森をみる株式投資」が“確率の高い資産運用”であることがおわかりいただけたたかと思います。

さて、今回はこのような「木を見ずに森をみる株式投資」をどのように自分に適した資産運用に役立てていったら良いかフォード財団の発表している資金運用マニュアルに基づいて一緒に考えてみたいと思います。

フォード財団の資金運用マニュアルとは?
  米国フォード財団が2001年に発表した資金運用マニュアルは、もともと大学や財団法人などの資金運用マニュアルとして書かれたものです。しかしながら、「資金運用のリスクの考え方」や「資金運用プランの作り方」は個人の資金運用にそのまま適用できるものです。

資金運用のリスクとは、もはや損失を被ることではない。
  フォード財団の資金運用マニュアルによれば、資金運用のリスクとは“価格変動”であると述べています。つまり、「個々の証券という木ではなく、金融市場に広く分散したポートフォリオという森をみる資産運用」では、リスクとは回復しない損失を被ることではなく、単に上がったり下がったりの“価格変動”に過ぎないのです。そして“価格変動”の大きい資産ほど最終的な収益が大きいのです。
例えば、預金には“価格変動”がないので収益は最も低くなります。一方、債券は金利の変動で元本が“価格変動”するので預金よりも高い収益がないと投資家を惹きつけられません。さらに、決まった満期や利息の約束がない株式は大きな“価格変動”を伴います。ですから、“相当高い収益”が見込めないと投資する人は誰もいないはずです。事実、株式市場や債券・預金一般の収益の実証研究でも 預金<債券<株式の順になっています。

米国の主要な資産(ポートフォリオ)の“価格変動”と“収益力”(1926-2000年 年率換算)
  収益力 価格変動(*)
株式(SP500) 11.0% 20.2%
債券(中期債) 5.3% 5.8%
預金(短期債) 3.1% 4.4%
フォード財団“Investment Management for Endowed Institutions 2001”より
(*)価格変動は標準偏差(価格のばらつき度合い)

このように、「金融市場に広く分散したポートフォリオという森をみる資産運用」ではリスク(価格変動)の大きさがリターンの大きさを決めることがお分かりいただけたかと思います。リスクの分だけ投資は報われるという法則は個別の証券への投資には当てはまりません。なぜなら、個別の証券は破綻したり、値下がりが回復しなかったりするからです。投資のリスクはリターンで報われるというメカニズムが期待できるのは広く分散されたポートフォリオの場合だけなのです。

次回は、このようなポートフォリオによる資金運用のメカニズムを利用して、“自分に適した具体的な資産運用プラン”を作る方法を一緒に考えてみましょう。



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