2006/10/10 フォード財団の資金運用マニュアルに学ぶ(2)
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フォード財団の資金運用マニュアルに学ぶ“自分に適した資産運用”(2)
梅本 洋一氏(株)アセットマネジメント・ラボラトリー


 こんにちはアセットマネジメント・ラボラトリーの梅本です。前回は“自分に適した資産運用”をテーマに、フォード財団が作った大学基金・財団法人向けの資金運用マニュアルを題材に、個人の資金運用のヒントをお話しました。
 徹底的に分散投資したポートフォリオでみる資産運用に限り、リスク(価格変動)の大きさがリターンの大きさ(預金<債券<株式の順)を決めることがお分かりいただけたかと思います。裏返せば、リスクの分だけ投資は報われるという法則は個別の証券への投資には当てはまりません。なぜなら、個別の証券は破綻したり、値下がりが回復しなかったりするからです。投資のリスクはリターンで報われるというメカニズムが期待できるのは広く分散されたポートフォリオの場合だけなのです。
 今回は、このようなポートフォリオによる資金運用のメカニズムを利用して、“自分に適した具体的な資産運用プラン”を作る方法を一緒に考えてみましょう。

■ その資産配分は自分に適しているか?
投資のリスクはリターンで報われるというのが、ポートフォリオによる資金運用のメカニズムであるので、結論はシンプルです。つまり、ポートフォリオで意図的なリスクをどれだけ引き受けるかを決めればよいわけです。平たく言えば、資金の何%まで株式市場を買うかで運用で覚悟すべきリスクと期待できるリターンが決まるのです。

●株式の保有割合と2つの確率 運用の「安定」と「成長」の適切なバランス点は?
  株式の保有割合(%)
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100
1. 
元本が1年で10%以上値下がりする確率(%)
0 0 1 2 3 4 5 6 7 8 10
2. 
5年間で運用益がインフレを5%上回る確率(%)
19 22 26 35 43 52 60 66 68 72 73
フォード財団 “Investment Management for Endowed Institutions”2001 より

 米国のデータではありますが、株式の割合が高まるほど(預金・債券の割合が下がるほど)第1.の観点では短期的な値下がりリスクが増すことがわかります。これは株式が債券・預金より価格変動が大きいからです。しかしながら、第2.の観点からは中長期的で十分な運用益を確保できないリスクは逆に減っていくことがわかります。なぜなら株式はより高い収益力を持っているからです。
フォード財団の資金運用マニュアルでも、『資金運用の最大の仕事は、短期的「安定」と中長期的「成長」を支える預金・債券と株式の各々に適切なバランス点を探すことである』と明言している理由が良く理解できるのではないでしょうか?

 問題は、各々の個人で期待するリターンや我慢できるリスクは違います。このような客観的な判断材料を用いて、期待リターンが顕在化するのをじっくり待つ、あるいは投資をしながら安心して眠れるリスクしか引き受けないような、最適な資産運用がポートフォリオのメカニズムを利用すれば可能になるわけです。

■ ポートフォリオ運用を実行するための運用商品
  (世界中の)預金・債券市場や株式市場に徹底的に分散投資し、組み合わせるのがポートフォリオのメカニズムを生かす秘訣です。ところがそのためには何百種類、何千種類の証券に分散投資しなくてはなりません。通常、多くの証券を購入するには巨額の投資資金と手数料が必要ですので個人投資家が自前でするのは不可能です。しかしながら、うまいやり方として多くの小口資金を集めて合同投資する投資信託を利用するという方法があります。

●徹底した分散投資を行うための投資信託ラインナップの一例
アセットクラス 商品 投資国数 投資銘柄数
日本株式(大型) *インデックスファンドTSP 1 1680
日本株式(小型) Jオープン 1 68
フィデリティ日本小型株ファンド 1 190
先進外国株式 *ステートストリート外国株式インデックスファンド 22 1431
新興国株式 シュローダー・エマージング 22 121
アジア株式 JFアジア株・アクティブオープン 8 66
国内債券 DLIBJ公社債オープン短期 1 101
外国債券 日興・GS世界ソブリンファンド 21 22以上
不動産投信 日興・AMPグローバルREITファンド 10 78
* 印は市場全体に分散投資するインデックスファンド 
投資国数・投資銘柄数は2006年4月現在の各投資信託運用レポートより

●標準的なポートフォリオの運用実績(標準的なお客様パフォーマンス)
運用タイプ 運用資産内訳 過去3年収益 過去1年収益
安定型運用 株式投信40%:債券投信60% +33.84% +14.43%
バランス型運用 株式投信60%:債券投信40% +54.96% +22.11%
成長型運用 株式投信80%:債券投信20% +83.57% +30.80%
株式投信内訳(日本大型株式投信、日本小型化株式投信、世界株式投信、アジア・新興国株式投信)
債券投信内訳(日本債券投信、世界債券投信)。
収益実績は2006年4月28日現在(手数料、税金除く)。将来の運用成果は変化します。

■ 自分に適した資産運用は“将来の生活のために置き換えることのできない保険”
このように、投資信託をオーダーメイドで組み合わせたポートフォリオを保有することは“将来の生活のために置き換えることのできない保険”ともいえます。意図的に引き受けたリスクなので、価格変動に翻弄されないでゆっくり眠ることができます。収益を生むまで安心して待つことができます。
リスクの分だけ投資は報われるというメカニズムは個別の証券への投資には当てはまりません。なぜなら、個別の証券は破綻したり、値下がりが回復しなかったりするからです。このように選択したポートフォリオ運用であればライブドア・ショックも他人事、価格変動に一喜一憂する必要もありません。『お勧め商品』の勧誘にも惑わされることは無くなります。なぜなら、あなたは自分に適した資産運用を既に実行しているからです。(終)



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