2008/7/4 銀行窓販とは
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銀行窓販とは
関野 栄一氏
テンプスタッフ・ライフアドバイザリー代表取締役社長


 
【『銀行窓販』の深読み 〜流通構造の大改革〜】

2007年12月より、銀行窓口での生命保険販売がスタートしました。これにより、1998年12月の投資信託販売開始を皮切りに、2001年4月の長期火災保険、海外旅行保険、2002年10月の個人年金保険、2004年12月の証券仲介業と、段階的に進められてきた銀行窓販は“全面解禁”となりました。

日本版金融ビッグバンの最終章として位置付けられるこの銀行窓販全面解禁によって、銀行・証券・保険の垣根が取払われ、消費者は一つの窓口、すなわち銀行で全ての金融商品を選択し購入することが可能になりました。
こうした消費者に焦点を当てた流通の幕開けは、従来のメーカー(保険会社)主導の販売に一石を投じることになるでしょう。

製販一体(メーカーである保険会社が販売員を抱える)を前提としてきた旧来の生保事業においては、流通過程での健全な競争は行われず、リーズナブルな保険料形成がなされてこなかったといっても過言ではありません。1996年の保険業法改正により乗合代理店が解禁となったものの、消費者に大きなメリットがもたらされるには至っていないのが現状です。

一方で、今回の銀行窓販全面解禁は、巨大な販売網、顧客網を有する銀行が、メガ代理店化し、保険流通におけるイニシアティヴを握っていくことを意味するのです。即ち、メーカーである保険会社は、商品開発、価格、販売手数料等の競争に晒されることになりますが、真の競争に基づく流通構造の形成により、消費者に適正な価格で合理的な商品を提供していくことが可能になるのです。



【銀行が窓販に注力する理由】

高度経済成長期における銀行の収益の柱は、主に企業向け融資でした。

ところが、バブル崩壊後、企業向け融資の落ち込みに加え、公的資金の返済が重くのしかかる中、新たな収益源の確保が課題となってきました。そこで、着目されたのが個人の預貯金だったのです。個人の預貯金を投資信託や投資型年金に振り替えることから発生する手数料、即ちフィービジネスを収益の基盤としていったのです。

広範な店舗網を基盤としていた銀行は、顧客に対するリレーションを強化し、投資信託や投資型年金の販売高を爆発的にのばしていきました。ところが、販売対象となった顧客層は主に富裕層であり、まとまった金融資産を保有する高齢者や、投資性向の強い顧客層に留まっていたのです。

一方、いわゆる欧米のバンカシュランスを見渡すに、そのサービスは、富裕層はもちろんのこと、一般のビジネスマン、若年層に対しても定着しています。富裕層が抱えるストックされた金融資産のみをターゲットとするのではなく、一般の個人が持つ給与所得等のフローマネーをグリップし、長期に渡る金融サービスをビジネスの基盤としているのです。

現在、日本においても銀行のビジネスは銀行窓販に象徴されるように欧米型に倣い大きく変容しています。銀行窓販とは、単に投資信託や保険の販売を指すのではなく、総合的なファイナンシャルプランニングをベースとした金融商品の提供による銀行の新たな価値創造に繋がっていくビジネスなのです。


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