2005/2/15 どうする?会社設立
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どうする?会社設立
山崎 信義氏 (株)タクトコンサルティング


 「先生、会社を作ったら節税になるって本当ですか」

 資産家や個人事業者の方からの税務相談では、この種の相談を非常にたくさんお受けします。

 「節税になるのなら、すぐにでも会社をつくりたいんですけど」

 なかには、こんなせっかちな方もおられます。

 ただ、会社を作ればどんな場合でも節税になるとは限りません。会社を設立すること自体はさほど難しくありませんが、費用もかかりますし、いったんつくると今度はつぶすのが結構面倒です。とりあえず会社を作ればいいや、というものではありません。
 まず、「会社を設立して節税するしくみ」を十分に理解してから、会社を作るかどうかを決めても遅くはありません。
 そこで、今回は、「会社を作って節税するしくみ」について、ポイントをお話したいと思います。

1. 所得税と法人税の税率の違い
個人事業にかかる所得税は、所得の高い人ほど高い税率を適用するという累進税率を採用しています。これに対して会社にかかる法人税は、所得に対して一定の税率を適用する比例税率を採用しています。したがって、所得が一定水準(約2,200万円)を超えると、所得税率が法人税率を上回るので、会社を作った方が税務上有利になります。
2. 法人が社長個人に役員報酬を支払うことにより所得が分散される
個人事業の場合、自分に対して給料を払うことはできません。これに対して、会社を設立して自分が社長になると、会社から自分に対して給料(役員報酬)を支払うことができ、さらにこの給料は、会社の経費にすることができます。
3. 社長個人が受取る役員報酬について給与所得控除というみなし必要経費が利用できる
2の役員報酬は、社長の給与所得として所得税がかかります。ただし、給与収入に対して直接課税されるのではなく、「給与所得控除」というみなし経費を差し引いた後の金額に対して課税されます。この「給与所得控除」が使える分、会社を設立して役員報酬を受ける方が、個人事業よりも税負担を軽減することができます。
4. 青色欠損金の繰越控除期間の違い
会社も個人も、その年(営業年度)に生じた赤字を翌年(翌営業年度)以降に繰り越すことができます。この繰越ができる期間が、個人だと3年間であるのに対して会社だと7年間認められます。
ただし、会社を設立することにより、新たに次のような負担が生じます。
5. 会社の営業年度終了の都度、決算や法人税等の申告手続が必要となる。
税理士に手続を依頼すると報酬を支払わないといけない。
6. 毎期7万円の法人住民税(均等割)の納税が必要となる。

 つまり、会社をつくって節税する場合は、前提として大きな利益(所得)が生じていることが必要です。大きな所得が発生しない限りは会社設立による節税メリットが取れませんから、個人事業の方が負担が少なくてよかった、というケースも考えられます。これらコストをかけても税金面でのメリットがあるかどうか、会社設立前に検討することが大切です。

 ○会社をつくった場合の節税効果(図参照)
 会社設立後、社長の給料を900万円支払うとすると
 (a)所得分散・所得税と法人税の税率差の効果
 (b)みなし経費(給与所得控除)による効果
 (a)+(b)=会社を設立した場合の節税効果

(単位:万円)



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