2005/12/20 医療制度改革と一人医師医療法人
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医療制度改革と一人医師医療法人
佐久間賢一氏 (株)KPMG MMC 代表取締役


医業経営の非営利性等に関する検討会報告を基に、平成18年の医療制度改革の検討が行われています。医療制度改革は、医療制度全体の見直しを含めて検討されているので一人医師医療法人制度の見直しもその中で検討されております。
今回は、ライフプランナーの方々が接する機会の多い、一人医師医療法人に的を絞って医療制度改革を見てみたいと思います。

一人医師医療法人の特色は
(1)医師の数は一人が大半 すなわち、診療所の法人化が大半。
(2)出資に対して持分がある。将来解散時に医療法人所有の財産が、医師個人に戻る。

 御存知のように、医療法上には「一人医師医療法人」という定義はなされておらず、医療法第39条に、「病院、医師若しくは歯科医師が常時勤務する診療所又は老人保健施設を開設しようとする社団又は財団は、この法律の規定により、これを法人(医療法人)とすることが出来る」と定められています。
旧医療法では医療法人の定義を、常時勤務する3人以上の医師が必要とされていたのが、昭和61年の医療法改正で3人という縛りが消えて、1人でも設立出来るようになり「一人医師医療法人」と通称呼ばれています。
 「一人医師医療法人」のもう一つの特色である出資持分ですが、医療法人を設立する際に医療機器や医療在庫等の現物を出資し、それに対する持分を定めたものです。
その反対は、出資持分を持たないか、所有財産を寄付して設立する財団となります。

2005年3月31日現在の医療法人の形態は、
社団医療法人 出資持分の定め有り 39,257 (内、一人医師医療法人33,057)
出資持分の定め無し 381  
財団医療法人   392  

今回の医療制度改革で、一人医師医療法人に影響の出る点は2点です。
(1)医療法人の出資者が、退社時の払い戻しに制限が発生
(2)出資額に限定とされた医療法人となる

(1)と(2)は結果として同じことになりますが、議論の論点が異なります。

(1) については、医療法人の非営利性を徹底させる為に、医療法人の営利性とは何かを明確にする必要があるとの議論がなされています。
その中で、事業を継続するのに必要な収益を出すことは当然であり、営利を目的としないという考え方とは矛盾しない。
営利とは、次のように定義されます。
A)出資義務を負わない
B)剰余金分配請求権を有しない
C)残余財産分配請求権を有しない
D)法人財産に対する持分を有しないこと
すなわち、医療法人からの配当及び解散時の実質的配当行為を禁止することが非営利性の徹底を図ることになります。

(2) 出資額限度法人は、平成15年6月27日の「出資持分払い戻し訴訟」(八王子裁判)により、医療法人の社員退職時に出資額に限り払い戻すという出資額を限度とした医療法人制度のあり方が、医療法人制度創設以来医療法第54条の「剰余金を配当してはならない」という規定に沿ったあり方であるとされました。
医療の非営利性 剰余金配当禁止
出資額を限度として払い戻す(拠出金)
出資額限度法人
拠出金とは、社員が退社時又は医療法人が解散する場合において、拠出額を限度として払い戻すもので、清算時における弁済順序は他の債務に劣後するものとなる。

平成18年の医療制度改革における、医療法人のあり方については次のように分類されることになる。
(1) 財団医療法人
(2) 社団医療法人
A) 出資持分の定めの無い
認定医療法人(仮称)  公益性を強く求められた医療法人
B) a)出資限度額法人   新設法人より適用
b)その他の医療法人  既存医療法人が該当
  現在ある39,257の一人医師医療法人については、当面の間現状の制度として、出資額に応じた払い戻しを受けられる法人として存続できることになっています。

この当面の間という規定が、どの程度のものなのかについては様々な意見が言われていますが、定かではありません。
来年の医療制度改革において、この点が明確になるかどうかが既存の一人医師医療法人の先生方にとっても大きな注目点となります。



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