2007/5/25 医療法人化のきっかけとアプローチ
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医療法人化のきっかけとアプローチ
松野 亮氏 CSアカウンティング株式会社
経営企画室事業開発 グループリーダー


一般的に2〜3年程度経つと法人化を考え始める開業医が多いのが現状です。

今回は開業医の法人化の動機を考え、どのようにアプローチをするべきか考えてみましょう。
 


■医療法人化のメリット

平成19年4月より医療法人制度が変わりましたが、法人化のメリットについては、改正以前と変わりません。メリットとして大きくは、次の項目が挙げられます。
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(1)所得税の超過累進税率の回避

(2)役員退職金の支給

(3)事業承継対策

様々な法人化への動機はありますが、最終的には何が法人化へのきっかけとなるのでしょうか。

■所得税の超過累進税率の回避

所得税は、累進課税(るいしんかぜい)方式により利益に課される税金です。
 
累進課税とは、 課税標準(租税を賦課する課税対象)が増えるほど、より高い税率を課する課税方式のことをいいます。

ちなみに医療法人の利益に対して課される法人税は、課税標準に概ね一定の割合を乗じて計算されます。

個人開業医の場合には、原則として、所得は全て院長である開業医一人に集中することとなります。

そのため、実質的にお財布が同じ(同一生計)家族に対して所得を分散させることを目的として、法人を設立します。

■役員退職金の支給

 開業医には、開業後の課題のひとつとして、クリニック廃業後の生活資金の確保をどのようにしたら良いかということがあります。

法人の場合には、役員の退職時に退職金を支給することで、支給時の所得税の負担をかなり軽減することができるようになります。

個人の場合には、高い税金を支払った後に貯蓄などをすることとなりますが、法人の場合には、退職金の支給を活用することで退職金税制の恩恵を受け、少ない税負担で済むために、結果として手取り金額がかなり多くなります。

■事業承継対策
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医療法人の場合には、相続発生時には、医療法人に対する出資について相続税評価額により相続
税の課税価額を算出します。 

医療法人に対する出資(株式)
を評価する場合には、類似業種比準価額と純資産価額をベースとして計算   を行います。

類似業種比準価額は、配当、利益、純資産を計算要素として算出するため、利益をコントロールすることにより、後継者により低い評価額で出資持分の移転が可能となることがあります。


■実際の決め手は?

私の経験では法人化の決め手となる殆どが、超過累進税率の回避です。
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その理由としては、私の想像になりますが、

(1)開業後2年程度では、まだ開業したばかりという実感で廃業まで想像できず、「退職金」という言葉に現実感がわかないこと

(2)子供が後継者になるかどうかも分からないのに事業承継に現実感がないこと

が理由だと思います。私が実際に法人化の検討を進める場合において、開業医から頼まれる内容は、「法人化により得をする金額の算出」がほとんどです。

まとめ



開業医は税金や所得計算の専門家でもなければライフプランの専門家でもありません。
そのため医療法人化という慣れない話を聞くのは実際大変なことだと思います。

殆どの開業医の場合、私が説明しても残念ながら半分ぐらいしか理解されていないというのが実情かと思います。

結局、医療法人化を検討するにあたり、今の税負担がどのくらい軽くなるの?ということが一番分かり易い話だということでしょう。

法人化を説得するには、税負担をどのくらい軽減できるかという点を徹底的にプレゼンするのが有効だと思われます。



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