2007/8/27 医療法人の財産保全のための方法
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医療法人の財産保全のための方法
松野 亮氏 CSアカウンティング株式会社
経営企画室事業開発 グループリーダー


平成19年4月からの医療法人制度改正の中で一番影響が大きいのは、解散時の残余財産の帰属先の制限等医療法人の非営利性の徹底(具体的には医療法人の残余財産の取り扱い)です。

この改正では、医療法人解散時の残余財産の帰属先が限定され、出資者が除外されました。

医療法においては、医療法人=非営利法人という位置づけが強化されてきていますが、実態としては医療法人の殆どは開業医の私企業であるのが実情です。

そのため、医療法人の運営において残余財産の保全をどのようにすれば良いのかという観点が重要になってきています。

 

■残余財産の取り扱い

平成19年4月からの医療法人制度改正により、解散時の医療法人の残余財産の取り扱いについて、その帰属先が国や地方公共団体等に限定され、出資者が除外されました。

また、平成19年4月1日までに設立された医療法人については、この規定は『当分の間』は適用されないこととなっていますが、将来適用される可能性がゼロであるという訳ではありません。

つまり医療法人は、今回の法改正において、残余財産のコントロールをどのようにするべきか?という観点が重要な課題となったということです。

■医療法人の所得配分の概念の変化

今まで医療法人の設立は、個人である開業医の所得の増加に伴い、所得税の税負担を回避するということが重要なテーマになっていました。そのため、院長1人に集中した所得を分散させ、

(1)
理事長 
(2)理事長夫人 
(3)医療法人 

と3箇所に分散させるのが一般的でした。

税率を考えればバランス良く所得配分を行うことが最良であり、バランスよく所得を配分することで、設立の目的であった節税を効果的に行うことが可能となったのです。

しかしながら平成19年の改正により、大きく状況が変わってきました。
今までどおりの所得配分を行うと医療法人に大きな利益が留保されるため、解散時を考えると「財産がなくなるかもしれない」という大きなリスクを抱えることとなってしまったのです。

残余財産を残さないことを考えれば、院長の一族に多めに所得配分を行い、医療法人に利益を留保させないのが今後の所得配分の考え方のスタンダードとなっていくことでしょう。

■医療法人の利益のコントロール

医療法人に留保される利益を少なくするために一番有効なのは、役員報酬を多く支払うということです。

これにより一般的なクリニックの場合は、今回の法改正に対応が可能になると思われます。

ところが、利益率の高い病院やクリニックチェーンなど収益性が高い医療法人ではこの方法だけでは多額の利益が毎年残っていくことも考えられます。

このような場合には、理事長が出資する株式会社を設立(MS法人の設立)し、この会社に業務委託を行い、その会社に利益を留保していくのが有効になります。

具体的には医療材料仕入、広告仲介、人材の派遣、事務の請負、コンサルティング業務をそのMS法人が実施し、その業務の対価を医療法人がMS法人に支払うことにより、医療法人の利益を移転することとなります。

この方法の注意点として、客観的な観点から契約内容や取引金額がおかしくない取引内容にする必要があります。関連法人だからこそ可能な取引は、税務調査の際に指摘されかねないので、十分注意する必要があります。


 

まとめ



医療法が変わっても医療法人設立の目的は、今後も所得税の節税にあることに変わりはありません。

今回の改正で変わったのは、節税のための所得分散の視点に、「財産保全の視点」を加える点になります。

解散時の残余財産を少なくしていくためには、対策として理事長一族への役員報酬を増額させ、法人に留保する利益を少なくすることが一番です。
これでも多額の利益が残るようであればMS法人を活用したスキームが有効になります。

現在、今回の改正に対応できていない会計事務所が多いのが現状です。


このチャンスを逃さずに法人設立の提案を積極的にしてみてください。




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