2008/5/27 ドクターの開業には十分な準備を
メルマガアーカイブTOPに戻る



ドクターの開業には十分な準備を
近藤 隆二氏 Kカンパニー代表
ファイナンシャルプランナー(CFP)・DCプランナー



はじめまして、Kカンパニー代表の近藤です。

日本の莫大な医療費の削減をしなければならないと日々マスコミが報道を続けています。その中でも勤務医より開業医の所得が大幅に高いという記事をよく目にするようになりました。

データ上では確かにそうかもしれません。しかし、一部の開業医を除き、それほど多くのお金が残っているとは感じることができません。

「開業してもドクターには何故お金がないのか?」考えてみたいと思います。


近藤隆二




このようなケースがありました。
勤務20年、最終の年間報酬は3,000万円超。40歳代後半で開業し、現在50歳。医療経営は順調に推移。医療法人を設立し、給与は先生奥様を併せ月額300万円以上。にもかかわらず、今年医学部に入学されたお子様の入学金1,000万円の支払いができず、銀行から借金をした・・・ 

このようなことが起こらないようにするためには、どうすればよいのか、考えてみましょう。


まず第一に、将来開業をするかどうかの意思決定を早くすることが大事です。

意思決定をしたら、早くから開業資金を貯えていくことが肝要です。開業資金は銀行から借りられるからいいよ・・・と考えておられる先生もいらっしゃいます。

しかし、有利な条件で借入をしたい場合(国民生活金融公庫など)には自己資金の金額で借入額が決まることがあります。
また、今後は医療経営が厳しくなりますので、銀行の貸出の条件が厳しくなることも考えられます。
開業後に運転資金が不足した場合には銀行からの追加融資が困難になることも多いのです。資金は少しでも多く持っているに越したことはありません。

高価な住宅や車の購入や、土地やワンルームマンションなどに対する投資などを行い、開業資金・借入に困るケースも多く見受けられます。
緊急性のないことへお金を使うことは控えることが大事です。

開業を成功させてからでも遅くはありません。
医療経営のための借金以外は医療法人を設立しても一生個人が返済し続けなければなりません。借金には十分注意しましょう。



第二に開業のコンセプトを明確にし、適切な開業・資金計画を立てることです。

病院での医療と個人クリニックでの医療は大きく違います。
専門分野、キャリアに囚われて、患者さんのニーズにマッチしないコンセプトで開業することは命取りになりかねません。

開業希望地域の患者ニーズに対応できない場合には、時間をかけて経験を積み重ねていきましょう。
設備投資も十分な検討が必要です。
病院で使用していた高価な医療機器や設備などが必要なのかどうかを考えましょう。
使用頻度が少ないものは購入せず、病院との連携を図る、高価な設備は開業後様子を見ながら順次購入していくなどの工夫も必要です。

また、建築・内装、医療器械などを併せると数千万円から1億円を超える投資になります。
業者に任せきりでは、どんどん投資額が増えるばかりです。複数の業者から見積もりを取ったり、信頼できるコンサルタントにチェックを依頼しましょう。
工夫次第では千万円単位のコストが削減できます。

開業直後はお金が出て行くばかりです。綿密な資金計画を立て、投資を検討する際には常に資金が足りるかどうかの確認をしましょう。



ドクターが開業を考える目的には地域医療に貢献したい、自分の理想の医療を行いたい、現在の収入では子どもが医学部に入学した場合学費が払えないなど、様々なものがあります。
ただ、この目的もドクターの生活が経済的に満たされてこそ実現でき、継続できることなのです。

まずはドクターのライフプランを考え、その後に開業の事業計画を立てることが重要なのです。

これらの計画を立てるにはドクター一人では困難が伴います。医療経営を取り巻く環境がますます厳しくなる仲、ドクターに寄り添い、継続してサポートできる専門家の存在が今までにも増して必要とされています。



PAGE TOP