2009/10/26 二者択一の技術解説
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二者択一の技術解説
西川 昭信氏(株)セールスエデュケーション・ラボラトリー



こんにちは、セールスエデュケーション・ラボラトリーの西川です。
トピックスに新シリーズ登場です。
『サバトレ』で解説をしている《営業技術》を少しずつご紹介していきます。
2ヶ月に1回ぐらいのペースでアップしていく予定ですので楽しみにしていてくださいね。


西川昭信

 

今回のテーマは『二者択一』

二者択一という言葉を聞いたことが無いという人は、ほとんどいないのではないでしょうか?
営業とは無縁の方でも、ごく普通の方法論として「二者択一で決定する」などと使いますよね。
ところが、これを“営業技術”と捉え、その効果効用を考えてみると、とても有効な“技術”であることが分かります。

では、具体的にどのような効果があるのでしょうか。
大きく分けて3つの効果があるのではないかと考えています。
紹介をいただいた方へ、電話でアポイントを取る時に使った場合を例にその効果効用を考えて見ましょう。

※前提条件:お客様の心理は「紹介があるので無碍には出来ないが、できれば断りたい」



(1)Yes or No の質問→ Yesを前提とした A or Bへ

一般的に、初めて連絡をしてアポイントをいただくには
イ) 理由を説明して、お伺い(お会い)することの承諾を得る
ロ) 日時を決める
という手順を踏みます。

ところが、前提条件にあるように、お客様は保険には既に加入しているし“出来れば断りたい”と思っています。
この状態で「生命保険のお話をしたいのですが、会っていただけますか?いただけませんか?(Yes or No)」の質問をしたらどうなるでしょう?
相当な確率で、「No」という答えが返ってくるでしょう。
ということは、このケースでは「Yes or No」の質問をしてはいけないということになります。
ですから、二者択一の営業技術では『Yes or No の質問』をせずに『Yesを前提とした A or B』という質問をしているのです。
これにより、お客様の思考を『会う、会わない』から『AとB、どちらの日程が可能か』に変換し、アポイント取得の可能性を高めるのです。

余談になりますが、私はトレーニングの一環でジョイントをすることがあります。
その際に、こんな状況が発生することがあります。

<テレアポ時> 
A:トレーニー(訓練を受ける人) B:お客様 私:西川
A「・・・ということで、一度お伺いしたいのですが、よろしいですか?」
B「いいですよ。」(たぶん、そう言っている)
A「それでは、今週と来週では、どちらがご都合・・・」

上記のやり取りの後、日時を絞り込んで、無事にアポイントが取れました。
私「二者択一という営業技術を使ってちゃんとアポイント取れた?」
A「はい、うまく出来ました」

これが、営業技術を理解していないということです。
二者択一という方法でアポイントは取りましたが、技術は使っていません。
「Aさんはちゃんと二者択一でアポイントを取ったよね。」と思った方は、もう一度私の説明文を読み返してみてください。

(2)ウソの拒絶を言わせる

二者択一の営業技術では、アポイントが取り易くなる理由がもうひとつあります。
こちらの効果は気付いてない方も多いのではないかと思いますので、わかり易いように、仮に同僚の女性を食事に誘うとしたら・・・、という例で説明します。
(この例は“わかり易い”ことが目的なので「不謹慎だ!」と怒らないでくださいね)

A:男性社員 B:同僚の女性社員
※前提条件:AさんはBさんと食事をしたくて仕方ないのだが、Bさんは一緒に食事などしたくない。が、同じオフィス内で無碍に断って、人間関係を悪化させたくもない。(これは、紹介をされてしまったお客様の心理に似ています)

A「○○さん、フレンチとイタリアンとどっちが好きなの?」
 *二者択一を使っていますが、これは今回の技術解説とは関係ありません。
B「どっちかって言えば、イタリアンかなぁ」
A「あ、そう。ちょうど良かった!実はこの間、イタリアンのすっごくいい店、 見つけちゃったんだ!もし、仮に一緒に行くとしたら・・・明日と明後日と どっちが都合いい?」

さて、こう切り出されたBさんは何と答えそうですか?
「あなたと食事になんか、行かないわよ!」と言ったらオフィス内で角が立っちゃいますよね。
そうすると、「行きたいか、行きたくないか」(Yes or No)ではなく、「都合」(A or B)を聞かれたわけですから、その質問を利用して 「(イタリアンには行ってみたいけど、)明日と明後日はあいにく都合が悪いのよ。」
などと、答えそうではないですか?

理論上は、これでBさんと一緒に食事に行けることが決定しました。
なぜなら、本当は食事そのものに行きたくなかったのに「都合が悪くて行けない」とウソの断りをしてしまったからです。
もう少し言葉を足して言えば、
「あなたとイタリアンに行くのはいいのだけれど、都合がつかないから行けない」と言ってしまったわけです。
すると、すかさずAさんは
「あ、そう。忙しいんだね。じゃあ、来週の月曜日と火曜日だったら、どっちが都合いい?」
「えっ、そこもだめなの・・・じゃ、木曜日と金曜日とでは?」
いかがでしょう?
Bさんはずっと断り続けることが出来るでしょうか?

これが、2つ目の効果「ウソの拒絶を言わせる」です。

注)現実には、その他の障害がいろいろ発生するので、この通りにやれば女性を必ず食事に誘えるというものではありません。ちなみに、私はこの技術を使って女性を食事に誘ったことはありません(笑)

(3)活動の効率を上げる

オープンマーケットで営業している我々にとってはこれが一番重要な効果かもしれません。

どういうことかというと、
仮に、今ここにAさんとBさんがいたとします。
Aさんの成績はコミッションで1200万円(MDRT基準達成)です。
Bさんの成績は600万円だったとします。
AさんはMDRT会員ですから、素晴らしい営業マンとして賞賛されるでしょう。
残念ながら、Bさんは「もっとがんばれ!」と言われるのでしょう。

ここで少し考えていただきたいのですが、Bさんは同じペースで仕事を進めたとすると、2年間では1200万円という数字をあげることが出来るわけです。
つまり成績とは、1年間という期間の中でいくら売るかということであり、“活動の密度”と密接な関係にあるということです。
「もっとがんばれ!」と言われているBさんも営業手法や技術は何も変わらなくても、活動の密度を上げるだけで成績は確実に向上するわけです。

活動の密度を上げる方法はいろいろあると思いますが、最も簡単な方法はお客様にお会いしてからお申込みをいただくまでの期間を短くすることでしょう。
ご成約まで1ヶ月かかっていた人が、その期間を詰めて2週間でご成約いただけるようになれば、単純に言っても倍の成績、その他の様々な波及効果を考えると倍以上の成績をあげることが出来るわけです。

そのためには、極力、直近でのアポイントを取得することが重要になりますが、残念ながら我々はお客様のスケジュール帳を持っていないので調整がとても難しくなります。
その時に威力を発揮するのが、実は二者択一という技術です。
自分のスケジュールの中で、面談可能な日程を直近の日時から順番に2つずつ挙げていき、お客様が「その時間ならいいよ」と言った日時が2人に共通な面談可能日時でもっとも直近の日程、ということになります。

もうひとつ、密度を上げていく際に大きな阻害要因となるものが“移動時間”です。これに対しても二者択一の技術が効果を発揮します。

例えば、少し離れた地域でマーケットが広がってしまった場合、月曜日と火曜日は○○方面の日と決め、○○方面の方にアポイントを取る時は、月曜日と火曜日で可能な日時を聞いていくだけで、方面別のスケジュールを組めるので、移動にかかる大きな時間ロスを避けることができます。

いかがでしょうか?
『二者択一』という営業技術の効果効用はご理解いただけましたでしょうか?
営業技術としての効果効用をしっかり理解した上で、二者択一を使っている人は、冒頭に登場したトレーニーAさんのように「今週と来週では・・・」というような選択肢の出し方もしなくなりますよね。

ただ、効果は理解できたとしても、こちらの都合で2つの日時をお客様にどんどんぶつけていくと、お客様が嫌な思いをするのでは、と感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか?
そのような方は、二者択一の前に
「仮に、もしお会いするとしたら、例えば・・・」と付け加えてみてください。
強引さはかなり軽減されますよ。
もしよろしければ、お試しください。



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